第1章

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 とりあえず、このマンションに住む、子供のいなかった夫婦の子供という形で、納まっていた。  ダメだ、僅かに来ないだけで、塩冶の能力は暴走する。 「薬師神。一人で帰るなよ」  琥王が文句を言いながら、えんきり屋に入ってきた。どうして、俺がここに居るとわかったのだろうか。 「俺は、これから森のくまに帰る」  明日、芽実はスタッフに店を任せるのだが、仕込みは今日してしまうと言っていた。量があるので、俺も手伝う。 「そうか。俺も、森のくまを手伝うよ」  琥王が、着替えてくるからと、走って行ってしまった。琥王ができることは、粉運びでかなり辛い。 「ねえ、薬師神君。えんきり屋、今は暇でしょ?パンの売り切れで、桐生が取りに行っている」  他に、クッキーを焼いて欲しいという。パンがあるなしで、客の数が全く違ってしまうのだそうだ。折角来たお客様に、何か出せるものをと、塩冶も考えているらしい。 「時間をみて、焼いておきます」  幾種類か焼いてみようかと思う。 「あの、塩冶さん。どこか、俺でも住める部屋ってあるでしょうか?」  神憑きが住める部屋。 「あるよ。ああ、家を出たいの。いいよ」  塩冶は、知り合いの不動産屋に電話をかけていた。  寺の横で、ほぼ毎日葬式があり、人が住みたがらない部屋があるのだそうだ。 「明後日にでも、下見してみます」  寺でも、神社でも格安ならば構わない。  琥王が着替えて走ってきていた。何故、走ってくるのか、そんなに急いではいない。 「琥王、バイト料はパンだぞ」 「それは、嬉しい」  琥王と、並んで森のくまへと向かった。 第二章 揃うと、どうなる?  善家、俺の母親の実家になる。母の兄は、とある大企業の重役で、家は御殿のように広い。純和風の家で、母が暮らして時の母屋は、古いだけではなく文化財にもなっていた。文化財では生活し難いと、横に建て増しされたのが、今いる場所であった。 「公園」  隣が見えない。庭に小山があり、庭木が植えられているせいだ。 「さてと、入るか」  安廣は、顔はにこやかだが、口調はピリピリしていた。  まず通された部屋は、畳の間であった。狭いので、とりあえず通すという間なのだろうか。窓は閉められ、障子も閉じられていた。 「お通ししなさい」
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