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はっきりと自分の手を認職すると白い靄(もや)がかかったような頭の中身も鮮明になっていく。手足がじくじくと痛みを訴えていた。少し腹も痛い気がした。指先を見てもどうやら傷はないらしい。瞬きを数度繰り返したティリアは突然身をがばりと起こした。
「さむっ!」
痛みの原因はこの周りの寒さだった。手足はかじかみ指先は千切れんばかりに痛い。ひっきりなしに吹く風に粟立つ腕をごしごしとさすりティリアは気付く。袖(そで)がない。
「これ……。」
身に纏(まと)う服はさらさらとしていて肌触りがいい。上質な布が使ってあるようだ。だがティリアにとって重要なのはそこではなかった。ノースリーブのぴらっぴらとした薄い生地の夏用ワンピースだということが重要だった。
絶句しながらも立ち上がる。強い風が吹いていた。白いスカートが目の前にまで持ち上がる。慌てて抑えると辺りを見渡した。
辺りは薄暗い。満月は煌々と地上を照らすが太陽のように暖かみはない。
「うー、寒い寒いっ! なんで!? どうして!?」
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