ドラゴンさんからお手紙来ました。

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 こういうのなんか絵で見たことある。止まりかけた思考の中でティリアはぼんやりと思った。鼓動だけが忙しなく頭の内側から圧迫されるようだった。   耳まで裂けているように大きな囗が開いた。鋭い歯がずらりと並んでいる。それを見た瞬間、 ティリアの思考は完全に停止した。 「あ、おい!」  意識が暗くなって体が傾しぐ瞬間、ティリアは男の声を聞いた気がした。どこか焦っているように聞こえた。 *****  ぱちりと小さく火がはぜるような音がした。ぬくぬくとした綿を詰めたらしい上掛けが気持ち良くてティリアは鼻の上にまで上掛けを持ち上げころんと横になる。  あと少し、そんな怠惰(たいだ)な誘惑に白旗を上げながら朝食の献立を考え初めていた。卵にベーコン、木の実を粉にして作ったパン。昨日残っていた食料をつらつら思い出し、冬は食べ物がパッとしないとも思う。  ふわりと鼻に草っぽい匂いがつく。 「……うん?」  ぱちりと目を覚すと勢い良く上掛けごと飛び起きた。いつも寝起きしているベッドではない。床に直接布団が敷いてある。 「あれ?」
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