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辺りを見渡すがティリアが見たことのない部屋だった。壁は剥き出しのごつごつとした灰色の石壁だった。暖炉は壁をくり抜いたような無骨なものだったが煙突はついているらしい。煙が部屋に溜まっていない。
座った位置からは見えないが明かり取りが上の方に設けてあるらしく日の光で部屋はうっすらと明るい。暖炉の灯りもあって部屋は細部まで見渡せた。
下に目を向ければ年季物の広く脚の短い机の上に乾燥させた植物やすり鉢や小さい壺などがごちゃごちゃと置いてあった。匂いの元はあれだろう。
「ってあれ? 私、ドラゴンに食われなかった?」
大きな囗が開く瞬間を見た。ティリアの頭など噛み砕きそうな歯も覗いていた。それなのに何故自分は生きているのだろうと疑問に思う。
「夢、とか?」
おもむろにティリアは自分が着ているものを見た。赤褐色のごわごわした貫頭衣を着ていた。こんな服も着たことはなかった。落ちてこない髪を疑問に思って後ろを手で探ると緩くリボンで結ばれていた。
「そもそもの発端は……。」
思出したいことはすぐに思い出す事が出来た。そして顔が引きつっていく。
「あんの、クソジジイッ……。」
呻くような言葉に込められた憎々しげな言葉。鈍く痛む腹をさすりながらティリアは奥歯をぎしりと鳴らした。
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