同棲?居候?する事になりました。

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 ティリアはギギギと錆びた絡繰り人形のようにぎこちない動きで後ろを振り返った。彼女の肩を掴む右手もそこから伸びる硬そうな腕もアホの子を見るような呆れた顔も人のそれだ。だがマリアたちもそうだった。ティリアは戦慄(わなな)く口を開いた。 「あ、あなたもドラゴン、なのよね?」 「最初に会っただろう? 俺が迎えに行ったんだから。」  月の光に煌めく琥珀色の瞳をティリアは覚えていた。もちろん鋭く尖った歯も大きく開いた口も覚えている。夢かと思っていたが現実だったらしい。 「ひいっ。」 「はいはい。良いから中入れ。風邪引くぞ。」  ごつごつした岩肌は痛かったが、アーファルとの距離を取ろうとティリアは壁にへばり付いた。今更な態度にアーファルは煩そうに御座なりの対応をする。ティリアの頭を大きな手のひらでがっしりと掴むとそのまま引きずって部屋の中へと放り込んだ。 「や、やっぱり町に行くからーっ!」 「はいはい。」  洞窟の奥にある戸はぱたりと閉じられたが、しばらく少女の喚き声が隙間から漏れ出ていた。
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