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「お前の頭はスライム並みか。」
ティリアはこの台詞がいったい何度目だっただろうかと考え、すぐに数えるのを止めた。優に二十回は越えているが気にしない方が精神衛生上好ましいだろう。そう結論づけて暴言を吐いた男を見上げた。
眉間に皺を貼り付けた男、アーファルは傘が内側に丸まった白い茸を両手に持っている。二つともティリアが採ってきたものだ。ぱっと見同じ茸にしか見えない。
「何度言ったら分かるんだ? シロタケとシロタケモドキは間違えるとヤバいから違いを頭に叩き込めって言ったよな?」
確かにティリアはこれを何回も言われていた。だが彼女にも言い分ある。
「モドキって付くくらいなんだから見分けが難しいってことでしょう? まだ教わって一カ月しか経たないんだから無茶言わないでよ。」
「なにがまだだ。もうだろ、もう。」
呆れの溜め息にティリアはむっと唇をへの字に曲げた。ティリアは自分の物覚えが悪いことを自覚していた。一応、覚えようと怒力もしている。だからこのような言い様には腹が立った。
町へ行くと何度も喚いていた彼女は一ヶ月経つ今もここ、レオルーの森にいた。
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