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「うむ、実はこのような手紙が追られて来てな。」
エグトルの右手で勿体ぶるように揺らされる手紙をふんだくり、ティリアはその内容に目を通す。
「赤きドラゴンが治める土地に住まう者たちに告ぐ。早々に花嫁を立てエストーラの崖へ連れて来られたし? なによ、コレ。」
「なにってそのまんまじゃろ?」
「だからって何で私が、」
ティリアがさらに反論しようとエグトルに向かい前のめりになったときだった。
「そうだ、リアが行く必要などない。」
頼もしい若い男の声が後ろから聞こえた。それはティリアが産まれたときから側にいる兄のトーラスの声だった。
「トーラス兄さん!」
味方の声に笑顔で振り返るが、ティリアの顔は一秒も満たないうちに硬直する。エグトルはすでに溜め息と共に首を振っていた。
大勢の視線の先に居たのは優に二メートルもある大男。だというのに体に張り付いたようにぴっちぴちのおそらく借りたのであろう女物の衣服を身につけていた。しかも入らなかったのか袖は破られ、スカートは留めるべき釦(ぼたん)が一つも留められず、腰をスカートごと麻縄で縛っていた。
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