偉大なものへ。

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何ヵ月も準備に時間をかけて、やっとその日がやって来た。反対していたメンバーもやる気を出し、進んで調査や準備、トレーニングに取りかかる。元々が登山好きなのだ、世界最高峰のあの山の名前を出して背中を向ける者などいないのだ。 当日、天候は曇り。しかし日程の通りならば、一番の難所や山頂付近に到達する頃には快晴の見込みがあった。 四十を過ぎたわたしだが、メンバーとの協力できっとやり遂げられると、信じていた。ただ、無理無茶はこれが最後だとみんなに釘を刺されてはしまったが。 「……さぁ、出発だ」 空港から飛行機で空を飛んでも、わたしにはジャングルジムからの風景と変わらない。やはり、自分の足で歩んだ頂上が至高なのだ。 ―――命懸け、という言葉がある。 わたしは一生分の命を懸けて、踏み出そう。 マッキンリーは"偉大なもの"という意味を持つ"デナリ"とも呼ばれるらしい。 わたしは趣味が高じて偉大なものに踏み込むまでになったのか。 うん、やはり後悔はしていない。
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