偉大なものへ。

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マッキンリー登山、十日目。 雪山登山の経験も豊富に積んできた。しかし、さすがはマッキンリーと恐れられる事か。 北緯63度という高緯度な位置にあるため、気温がとにかく低い。そして酸素が薄いのだ。登れば登るほど薄くなる酸素。メンバーに低酸素症の症状が出ると、休息をとり、休み休みだが確実に登っていった。 メンバーの中には、海外登山経験が豊富なベテランもいた。彼はわたしがスカウトしたのだ。大学サークルから始め、趣味とし楽しんできた登山を本格的なものに変える手助けをしてくれた。 「クレバスは当然知っているよな」 休憩中に彼は話した。 登山経験が豊富なベテランメンバーのみで望んだある山の登山。その日、新雪が一面を覆い深い雪の中をみんなで登ったそうだ。 しかし、新雪が隠していたクレバスにメンバーが落ちたという。落ちればそれは、死と同じ。 クレバスの中は巨大な迷路のようになっており、落ちてしまえば登るのは不可能。当然落ちてしまった彼のメンバーは助からなかったそうだ。遺体すら引き上げられない、現実。 彼は、後悔をしているだろうか。
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