偉大なものへ。

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休憩を終えて、我々はまた歩き出した。 それから数日後に、ベテランのメンバーがわたしを呼び止めた。 「あれを見ろ」 彼が指差したのは、なんと我々が目指すゴールだった。手前の山の頂上の向こうに小さく見えるとんがり頭。 近くに見えても順調に行けるなら、あと五日はかかるという事。幸い天候は我々に味方してくれていた。雲ひとつない青空がわたしのたちを見守ってくれている。 「みんな、さぁ、行こう。ゴールが見えた」 わたしはみんなを励まし、自分を励ました。ここまで誰一人脱落者はなく、怪我もなく来れたのは、きっとこの青空と神様が見守ってくれているからだ。 ……時折、半分ほど雪に埋もれた"先輩"達の横を通り過ぎた。命は儚い。命は尊い。しかし、ここには命を懸けるだけの価値がある。夢がありロマンがあり、そして現実があるのだ。 斜面が急になる。肩に、体に食い込む背負った荷物。浅くなる呼吸。揺らぐメンバーの背中……。 気付いた時には、わたしの足は動いていなかった。
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