5人が本棚に入れています
本棚に追加
休憩を終えて、我々はまた歩き出した。
それから数日後に、ベテランのメンバーがわたしを呼び止めた。
「あれを見ろ」
彼が指差したのは、なんと我々が目指すゴールだった。手前の山の頂上の向こうに小さく見えるとんがり頭。
近くに見えても順調に行けるなら、あと五日はかかるという事。幸い天候は我々に味方してくれていた。雲ひとつない青空がわたしのたちを見守ってくれている。
「みんな、さぁ、行こう。ゴールが見えた」
わたしはみんなを励まし、自分を励ました。ここまで誰一人脱落者はなく、怪我もなく来れたのは、きっとこの青空と神様が見守ってくれているからだ。
……時折、半分ほど雪に埋もれた"先輩"達の横を通り過ぎた。命は儚い。命は尊い。しかし、ここには命を懸けるだけの価値がある。夢がありロマンがあり、そして現実があるのだ。
斜面が急になる。肩に、体に食い込む背負った荷物。浅くなる呼吸。揺らぐメンバーの背中……。
気付いた時には、わたしの足は動いていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!