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知らなかった――クラスメイトの顔や名前なんて、ほとんど覚えてない。
つまり彼女が狂う伏線は朝のうちに張られていて、たまたま僕が夜道で彼女に会わなければ、そのまま回収されることもなく、抹消されて。
対馬滲は舞台に上がることすら、できなかったのか。
「まあ、そういう意味ではお前はファインプレーだよ。結果としてあの子は死んじまったけど、お前は最後にあの子を救ってやれたんだ。本来なら物語に登場することもなく消されていた、あの子をな」
それは戦果で、いいんじゃないか――?
目頭が熱くなる。その言葉に、僕は今にも泣いてしまいそうだった。
そうか。
僕の戦いは、敗北は無駄じゃなかったのか。
ただ、それなら。
「そこまで気にしてたなら、周防。お前どうして昨日手を貸してくれなかったんだ?」
彼がいてくれれば、恐らく対馬さんの命を取りこぼすことはなかっただろう。
それだけに、なんともやりきれない。
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