scene5「虚数頁の枕詞」

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 いくつか理由はあるが、その最たるものは僕が紙媒体に厚い信頼を置いているから、である。  実体の無い不確実なものよりも、この目で見て、触れることのできる質量を持った物の方が信用がおける、という、実に凡人じみた理由だ。  そして次が、ここの蔵書に見られる特徴に由来する。  ローカルな施設であるがゆえに、ここにはかつてのこの町に関する資料が数多く残っているのだ。  地形図や歴史書は勿論、町内誌のバックナンバーまで。  あの都市伝説がどのくらい前からこの町に存在しているのかはわからないが、これらを一通り調べればそれなりに有益なものを得ることができる、 そうでなくとも、何かしらの結論を出すことができるのではないだろうかと考えたのだ。
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