scene5「虚数頁の枕詞」

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 それでも、僕には休んでいる余裕などなかった。  足りないのだ。  真相に至るための、あの怪人を明らかにするためのピースを集める時間が、圧倒的に不足している。  昨晩、あの白色は確かに言った。 『夏休みが始まったら、クラゲちゃんは消えてしまうよーー』  もし伊予が質の悪い嘘を吐いているのでなければ、僕に、そしてクラゲに残された時間は来週の月曜日まで。  今日を含めて四日ほどしかない。  消えかけが三年かけて戦ってきた相手を、百時間足らずで下さなければならないのだ。 「………………どうしろっていうんだよ」  難しいなんてもんじゃない。  ハッキリ言って、ほとんど無理だ。  あの怪人はそう容易く倒せる相手ではない。  あらゆる策をくぐり抜け、  あらゆる力を押さえつけ、  あらゆる場所で、襲い来る。
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