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僕は起き上がり、ソファに座り直して湯飲みを掴む。
中身は冷たい麦茶なのだろう。陶磁器の器越しに伝わってきた冷気が、手のひらに心地よかった。
「サンキュー、近江(おうみ)さん。丁度喉が渇いてたんだ」
軽く礼を言って、口をつけた。
下から喉へ。流れてゆく滑らかな液体が身体中に染みる。
その間、僕を見つめながら満足げに目尻を下げた彼女ーー近江さんは、ここの司書だ。
この図書館は設備のわりに利用する者が少ないらしく、彼女の他には僅かなスタッフしかいない。
休館日である日曜日を除く週六日勤務。
それが労働基準法的にはどうなのかは知らないが、少なくとも彼女は嬉々として働いているように見えるから、僕が口を挟むことではないのだろう。
ならばここで持ち出すべきは、やはり雑談か。
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