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「可能性とは未来のことで、未来とはこれ、つまり君のことだ」
先行したのは気管支から肺にかけてを浸す、暗褐色の息苦しさだった。
次いで、温度。
ジリジリと表皮を焼く炎熱が、やがて吸気に混じり、身体を内から焼いていく。
右を見ても赤。
左を見ても赤。
もう、建材と自身の焦げる臭いしか感じることのできなくなった嗅覚。
煌々と照らされているのにも関わらず、徐々に狭くなっていく視界。
そんな中で『あの人』の言葉だけが、ハッキリと浮かび上がっていた。
「私はもう、この世の中が厭になってしまったんだ。愚か者と権力が幅を利かせ、実力を端に除け、弱い者を虐げて、そのくせ、ちょっぴり本気を出しただけで文句を言ってくる」
現代は腐敗している――僕を脇に抱えながら、そう言っていた。
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