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僕の咽は、もっと言ってしまえば声帯は、既にカラカラに乾いてしまっていて、渇いてしまっていて、呻き声以外の発声を許してくれない。
だというのに『あの人』は、まるで僕の言わんとしていることを理解しているかのように、
「うん? 君が気にしているのはそんなことじゃないのか。まあ、いいさ。どっちにしろ私がやることは決まってるし」
不意に、熱さが消えた。
それはつまり『あの人』の温度すらも感じられなくなるということで、僕の身体はひどく寒々しい、忍び寄る末期に抱き抱えられているようにも思えた。
そんな僕に、『あの人』は。
「いいかい。世の中は嘘ばっかりだ。人は嘘を隠すために嘘を突き通すために嘘を塗り重ね重ね嘘を吐き捨てるように嘘を吐く」
でもね、と、顔を寄せて、
「嘘が全部悪いわけじゃあ、ないのさ」
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