scene-1「継ぎ接ぎの記憶と。」

5/6
前へ
/90ページ
次へ
 炎は、またしても勢いを増した。  もうこれ以上燃やすものも無いだろうに。それとも、酸素の存在する限り暴れ狂ってやるとでも言うのだろうか。  そんな中に、『あの人』は立っている。  僕と共に立っている。 「私の人生を、この饐えたジャンクフードのような一生を照らしてくれたのは、いつだってそんな法螺吹き達だったよ」  法螺吹き?  音もなく、僕は復唱する。 「夢追いビト、ってやつさ」  ガラガラと、遠くで何かが崩れる音がした。  崩壊が近いのだ。そうなれば僕は助かることができないだろう。  一方でそれは、この地獄からの解放も意味していて、僕は、 「いいかい、立派になんてならなくていいんだ。君程度の人間に変えてもらおうなんて世界は思っちゃいない。当たり前のような、つまらない人生を歩んだって、その失敗すらも私は悪いとは思わないよ、だから――」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加