第1章

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少年を呼び止めると巨大な耳お化けに喰われるという都市伝説が巷で囁かれるようになったのは、暫くしてからだった。 少年に道を訪ねてはいけない。訪ねたら最期。巨大な耳が、まるで大蛇が蛙を丸飲みするように、いとも簡単に人間を一口で喰ってしまう。 そして咀嚼したあと…器用に耳を吐き出す。 吐き出された両耳が、巨大な耳お化けの出現した証拠。 もし、出会ってしまったら耳を誉めろ。すると消えるらしい。 こんな都市伝説を誰が信じるだろう。 耳が腕に出来てから、僕は引きこもっていた。食べ物を買いに行く以外、外に出ない。学校にも行っていなかった。 僕の腕に出来た耳は、更なる変化を遂げていた。 見るに絶えない耳だらけの腕から徐々に耳が消えていく。 このまま消えたら、また普通に生活出来ると少しだけ希望が持てた。 だけど…。 耳は僕の背中に集結して…ひとつになろうとしていた…。
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