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呼び止められて、振り返るとそこにはいつもの三人の顔があった。
「ーっ」
薄い金髪の少年、茶髪の少年と少女。年齢も、国籍も違う私達。
分かっている、三人はもういない。
彼らは、薄暗い地下室の壁に、一瞬浮かんですぐ消えた。
日生(ひなせ)は、目の前の鉄格子に手を伸ばし、そして握りしめる。
「こんなところに...」
閉じ込められていたというのだろうか、かつての友人は。
ボビーがセレアを殺した。それは、紛れもない事実だ。けれど、それが本人の意志ではなく、この地下室で虐待されることによって生み出された人格によるものだとしたら。
許さない
唇をかみしめ、その思いを胸に宿す。
自分の命を狙っているのは、おそらく、ボビーを利用していたマフィアの人間だ。セレアの両親を殺したマフィア。それを嗅ぎ回っている私が邪魔なのだろう。
でも、私の代わりに太陽が死んだのは誤算だったね
クスッと笑って顔を挙げる。脳裏に蘇ったのは、「惚れた女を守って死ねるなら、自分は幸せ者だ」と言って笑った彼の顔だった。
忘れない
自分がこれからやろうとしているのは、私怨による復讐だ。間違っても「正義」 ではない。
まぁ、復讐にすがりついてしか生きられなかった私がこの道に入った時点で、「正義」なんてモノとは縁遠くなってるんだけどね
そう自嘲すると、日生はくるりと踵を返す。
『サヨナラ』
地上への階段を踏みしめながら、日生は地下室に置き去りにした、自分の子供時代を想った。
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