学習記

一時間目――プロローグ――

坂内は不自然に澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、それを吐いた。まるでドラゴンでも出てきそうなほどに壮大でファンタジーな世界。青々と繁る草木が、その奥にある街並みを覗いてもらえるように、あえて開けた場所を作り出しているように思えた。ずっと森だったとしても構わないはずなのに。人間が手を加えたようには見えなかった。植物と人間が知らず知らずのうちに境界線を作った、そんな感じだ。
　絵のように不自然に美しいその景色はまるで死んでいるようで、一抹の不気味さを坂内に植え付ける。鳥は飛ぶし風も吹く、だと言うのに何故か生命が感じられないのだ、ここには。美しいことには美しい景色なのだが、脳裏に張り付いて離れない違和感。現実のものじゃないような、もっと薄っぺらくてワンクリックで消えてしまいそうな景色だな、と呟いてみれば仲間が目覚め始めた。復活の呪文を唱えた覚えはないが、かれこれここに来てから1時間だ。目覚めてもいい頃だろう。

『石原来人(ｲｼﾊﾗﾗｲﾄ)

得意教科　理科、保健体育
性別　　　男
偏差値　　68
備考　　　陸上部』

『朝霧琳(ｱｻｷﾞﾘﾘﾝ)

得意教科　数学、技術
性別　　　女
偏差値　　73
備考　　　特待生』

『古市織音(ﾌﾙｲﾁｵﾘﾈ)

得意教科　英語、家庭
性別　　　女
偏差値　　65
備考　　　帰国子女』

『桐井翔貴(ｷﾘｲｼｮｳｷ)

得意教科　社会、音楽
性別　　　男
偏差値　　68
備考　　　合唱部』