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「信じれるわけねぇだろ、そんなん。証拠見せろよ」
桐井が自信なさげに呟く。その顔色はかなり悪い。実際、頭の中ではわかっているのだろう。ここが、自分たちの世界とは違うことに。
「いいけど。はい」
パチンと坂内は指を鳴らし、この場にいる全員のステータスを出現させる。こんなこと、現実世界で出来るはずがない。ふきだしのようなそれに手を伸ばしたが、ステータスをすり抜け、触れることすら出来なかった。
「なんで偏差値ばれてるの……!?」
一番偏差値の低い古市はあわてて隠そうとするが、効果はなかった。
「大丈夫だって。皆知ってたし」
「え!? なんで!?」
坂内のフォローも意味はなく、余計彼女の羞恥心を掻き立てるだけだったようだ。気にしないから平気だよ、と朝霧が言ったが、この人が言うと嫌味にしか聞こえない。ちょっとぶっ飛んでるが基本的に朝霧は性格がいいので、おそらく意図していなかったのだろうが、天才とは辛いものである。
「……なんか雰囲気和んでるけどよ、この状況どうにかしてくれよ」
「……あ」
石原の言葉に坂内ははっと我に帰り、ひとつ咳払いをして、説明を始めた。
「ここは僕の作ったゲームの世界だって、多分わかってもらえたと思う」
「理解はしてねぇけどな」
「それでもいい。で、ここはゲームの世界だから、設定ってものがある。これを見て」
そういって坂内は、持っていたノートを開いた。
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