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咲夜が自身の長身を利用して、テーブルに足をかけて、踏ん反り返っていた。
刹那が呟く。
「またやってる」
私は窓を磨いていた。
刹那がチラチラと咲夜を見、呆れたとばかりに溜息を吐く。
一通り窓を拭き上げてから、刹那の方に行く。
「何か問題でもあるの?」
刹那は困った顔で私に気を遣うように無理に笑って見せた。
「客が怖がって来ないの」
「何とかして見せようか?」
「止めときなさい。アイツにマークされたら最悪よ」
私は雑巾を絞ったバケツを手にした。水の上を汚れ物がプカプカと浮いている。水は淀んだ色をしていた。
刹那は一瞬青ざめたが、悪魔染みた顔付きになって事の成り行きを見守ることにしたようだった。
咲夜は新聞紙を読んで気付いていない。新聞紙には太った紳士的な男性がスピーチする姿が捉えられていた。下に《駈流美氏の演説『狐狩り』》と書かれている。
私は咲夜に聴こえるよう声を張り上げた。
「テーブルは足をかける場所じゃありません!!」
咲夜が凄い反射神経でその場を退こうとする。だが、長い脚が返ってバケツに引っかかり、私諸共ザブンと全身に汚水を被った。
「何しやがる!!?このクソガキ!!!」
私は剣幕に押され泣きじゃくるフリをした。
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