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「夢羽、バケツを運んでただけなの。ゴメンなさい!」
咲夜が神経質そうにコートの中の財布の札束をチェックする。少しヨレていたが、大事には至ってなさそうだった。
舌打ちしながら、冷たい目で私を射抜くように睨みつけ胸ぐらを掴んできた。
「バケツはな、逆方向に持って行くんだよ、ドアホ!!」
私は微かに微笑しながら、泣きじゃくるフリを続ける。
「咲夜が今度から教えてよ!服、着替えなくちゃ」
咲夜が自分と私の額を押し付ける。
「俺が風呂に先に入るのが筋というものだ。お前の髪の毛に微生物が付いているぞ。つまり俺の髪の毛にも微生物が付いているということで間違いないな」
「アメーバが頭に付いてるの?」
咲夜から応答は無かった。
ただ最後に冷めた一瞥すると立ち上がり、宿泊所の風呂場からお湯を沸かす音がした。
刹那が心配そうに駆け寄って来る。
「ミイナさんがもっと人選力あればあんなヤツ採用するはずがない。アイツと揉め事になったら、あなたの仲間だから」
私は上目遣いで刹那を見やる。
「お姉ちゃん…」
刹那が店番のエプロンのポケットから赤いハート模様のハンカチを取り出し、私の頬や髪の毛を大雑把に拭った。
「こんな小さい子に…咲夜はダメ人間」
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