第1章

3/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
私は炎の中、君を置き去りにして、旅立った。 故郷の山々が燃え、パチパチとした悲鳴を轟々と上げると、223年生き続けた私の身をも焦がした。 それでも君は微笑んでいた。 私はあの時、もう君とは会えないと悟ったはずだった。なのに、何故こんなに近くにいるのだろう。 彼の名前は炉樹(ロキ)。 彼はこの街一番の人気な店ダイエットスイーツカフェ、名付けて〈ダイスカフェ〉ーーサイコロの目の意味をも持つーーの店員で私を見た瞬間から意識しているかのように横目で私をチラチラ見ていた。 「ミイナさん、あの子は幼気に見えますがシッカリとしている。どこから現れたのです?」 ミイナさんは年齢の分からない不敵な金髪を肩でカールさせて少しだけ困った顔をした。 「帰る場所も言葉も分からないみたいだったから拾って来たけど、炉樹君が不満なら、捨てて来るわ」 私は目を覚ました。これが現実なのだ。 君はもういないはずだ。 「あ、あの…」 ミイナさんと炉樹君が一瞬驚いたかのように私を見た。 「言葉思い出しました。これは日本語ですね」 炉樹君は精一杯の笑みを顔面に張り付かせ、話しかけて来る。 「ねえ、君、名前は?」 私はわざとあどけない笑みを浮かべた。 「私は夢羽(ムウ)」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!