第1章

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街一番の店とは言えど、〈ダイスカフェ〉は昔ながらの木材の建物だ。ただし、古い木材でなく、プラスチックに最も近い木材を使っているから、冬に厳しい反面、強度も高級感も違う。パッと見、木材が光って見えるのだ。 私は炉樹と話をしていた。何の話なのかは分からないが今流行りのゲームの話のようだったので、妖霊族の仲間からの噂で適当に話を受け流しつつ、炉樹の正体を探った。君がここにいるはずがないのだ。 君は私が見殺しにした。 炉樹は13歳ぐらいの黒髪ショートで華奢な少年だ。どこか人を魅了させるオーラを纏い笑顔がパサパサに乾いているのが憎めない。砂漠でようやく見つけたと思った水が毒入りだったような感触にネチネチ押され、私は俯きがちにただ微笑んで見せた。 炉樹は満足気な笑みを浮かべて、ストロベリージャムの付いた口で話す。 「『リベンジトレジャーズ』を知ってるとはなかなかマニアックだね。夢羽、君とは気が合うよ。ミイナさんも咲夜さんも刹那さんも僕のことをバカにするから絶望してたところさ」 私は炉樹の手を握った。 炉樹の顔が赤らむのが見えて悪戯心に火を点ける。 「私、炉樹をバカにしてないように見えるの?」 「君の無垢な顔はヤツらと一緒にしたくないんだよ」
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