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朝は5時半に緩く優しい起こされ方をした。少し安っぽい布団でぐるぐる巻きにされて、ズルズル休憩室まで引き摺られた。てっきり最初は炉樹がやっているのかと思ったがミイナの微かに甘いコーヒーの香水に気付き、混乱した。
「今日も相変わらずね」
ミイナの呆れた物言いに対し、何者かが煙草を放り投げて片手で受け止め、ジュッと煙草の火を消す気配を漂わせる。
「ん?」
最初の一言にしてはマヌケだが、恐ろしい殺気にその場の空気が凍った。私の生存本能がこいつは殺さなくてはいけないと告げる。それに対してミイナは恐怖を微塵も感じさせなかった。無知の知というのはこういうことを言うのかも知れない。
低い声の主はしばらく何も言わなかったが、とうとう痺れを切らしたのか、私を指差した。
「〝それ〟は何だ?」
「〝それ〟とは人に対して失礼ね」
「アンタだって布団の中に人を包めて連れて来るのは失礼だ」
「自己紹介して頂戴、夢羽」
私は寝ているフリを決め込んだ。あの殺気は尋常ではない。〝あれ〟は人ではない。
再び続いた長い沈黙の後、そいつは呟いた。
「夢羽か。小娘が。俺は咲夜(サクヤ)。この店の夜の管理人だ。ただし、満月の夜にはここにはいられないがな」
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