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ミイナが今頃気付いたように、布団を開けて、私は転がるように布団の中から出て来た。畳は木の香りがして、故郷を連想させ、悪くなかった。
上目遣いで咲夜を見る。黒いウルフヘアにカラコンであろう赤目がそいつのビジュアルへのこだわりを感じさせた。何て厨二病だろう。普通の人ならうかうかバカにし、人間らしからぬ力に支配され、苦行の道への一歩を進まされずにいられないだろうが、妖霊族でも優秀だった私は素早くマヌケぶった。
転がって行ってワザと壁に腰をぶつける。
「はう~」
咲夜の不審げな表情が変わるのを見計らって、立ち上がる。
「あなた、誰?」
咲夜はしばらく私を見ていたが、ブツブツ呟き始めた。
「あんな小娘が?俺様より?そんなバカな話などない。情報の聞き違いだろう」
私は大きな欠伸し、口を開く。
「夢羽、まだ眠いよぉ~。ミイナさん、この人、誰?」
ミイナは微かに笑った。
「このアンニュイなV系男は咲夜。咲夜、もう一度言うけど、この小さくて可愛い生き物は夢羽よ」
咲夜はイライラした様子で煙草に火を点けた。狼の絵柄の付いたライターからはオークションで見張り続ける咲夜の姿が伺えた。冷静に見えて割りと神経質なのだろう。
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