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私と咲夜は会話にならない会話をしていた。
「で、お前どこから来たの?」
「遠い所」
「ふーん。言いたいことは?」
「空が飛べるよ!」
「で、虫は大丈夫な訳?」
しばらくすると、赤いリボンを長いストレートの黒髪の両端に結んだ女の子が宿泊所から降りてきた。年齢はおそらく16歳ぐらいだろう。咲夜は25歳と自称していた。
「誰か壁にぶつかった?」
私はミイナを指差した。
「寝ている所を階段から落とされて、布団から転げ出たらぶつかりました」
女の子は私をマジマジと見た。
「君…」
私の心臓が高鳴る。妖霊族とバレただろうか。バレたら、殺さなくてはならない。咲夜は既に決まった。
「寝癖なのかアホ毛なのかハッキリさせて」
私は余りにもの想定外の質問に言い淀んだ。
「アホ毛です。多分」
いきなり、ツカツカ歩み寄られる。髪の毛を一本取られた。体だけ人間のため、髪の毛は蒸発した。
「アホ毛ではなく幻想毛でしたか…」
私は少し慌てた。
「それ、何?」
「本当は存在しない毛のことです。ウィッグのより楽しいものですね」
「楽しいの?」
「はい!」
女の子は取って置きの笑みを浮かべて私の瞳を見据えた。
「私、刹那(セツナ)」
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