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僕はお腹が弱い。それも超弱い! そこだけは自信がある。(自慢にもならないけどね)
もちろん! いつも家を出る時にはちゃんと済ませるんだよ。
だけどね。お腹だけはお目覚めするのが遅いから、電車の中で爆弾に導火線に火がつくことが多々ある。
それが今だ。
冷や汗ダラダラ流し、涙ながらに僕はこう独り言を言う。
「ああ……神様。どうか、どうか……。お願いします。もう何でも言うこと聞きますから」
もうお風呂場でお菓子食べたりしません。
もう夏に冷蔵庫を開けたまま涼んだりしません。
もうヨーグルトの蓋についてるのを舐めたりしません。
もうコンビニの商品を奥くから選んだりしません。
もう自分で写メを取って一番カッコ良く見える角度の研究とか止めます。
この年になって電車でお漏らしなんて格好悪すぎる。
それを回避できるなら、どんなことだって神様にお願いするよ。普段は信じていないけど……。
「ああ神様……。これを乗り切れたら貴方を信じます、ってばーっ! 一生のお願いッ」
僕は一人、乗客の中で不自然にキョドり、そわそわ、ぶつぶつ、最後はうろうろする。他人(ひと)から見れば怪しい少年に見えると思う。自分でも分かっている。
最後は「もういいっ。無理だって思ったら連結部分だ!」なんて馬鹿げた考えに活路を見出す始末。
万が一! 漏らしそうになったら、短時間でも車両と車両のつなぎ目に逃げ込み、駅に着くまでドアを開けない。悪いとは思うけど人が来ても愛想笑いで凌ぐつもりだ。
そして駅に着いた瞬間、猛ダッシュ! これが僕の考える最終手段。
幸いお腹が弱いせいで良いこともある。少ないけどね……。
うんちがね。僕は臭くないんだ。いつも嫌味しか言わないお姉ちゃんでも、それだけは不思議がって認めてくれてるから、多分本当だよ。便通が多いから腸に溜まらないんだとか。
だから漏らしてもお尻の染みさえ見られなきゃ、臭いでバレることはない。(と思う)
と、そんなことを考えてる内に次のN駅に着いた。目的の駅じゃないけど、漏らすよりはマシだ。ここで降りれば遅刻するけど、うんこマンの称号を手にするくらいなら……。
そして僕は途中下車をして、悠然とおトイレの方へ歩き出した。
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