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そう、僕は自分が乗ったことのある路線の殆どの駅は、どこにおトイレがあるか熟知済み。あんまり人に自慢出来る特技じゃないけども。
そして、この悲劇。
驚愕の事態に遭遇した!
僕の中の危険レベルでは既にレベル4だ。当然5段階あるうちの4。限りなく5に近い4。でも侮ってはいけない。5は最悪漏らしてしまった時の最終レベル。だから4が事実上の最高レベル。
なんとか駅に着いたことで気が緩んだ。もう大丈夫、後は”出す”だけだもん、と安心しきっていたんだ。僕はなんて馬鹿な過ちを犯してしまったんだろう……。
黄色と黒の四角く小さい看板みたいな物が男子トイレの前にぽつんと置かれていた。
おトイレに辿り着く前に、一人のおばさんが男子トイレから出てきた。僕はおトイレの前まで来て立ち止まり、躊躇する仕草をこれ見よがしに見せた。分かってよ、おばちゃんという意味合いをわざと見せ付けるように。
するとおばちゃんは、こう言ったんだ。
「お兄ちゃんトイレ? 今、清掃中やから~」
ちょっと待っててね、とも言わない。その物言いは僕が諦めてどこかへ行くのを当然のように感じている口調だ。
百戦錬磨のおばちゃんには、まだ十代半ばくらいの小便たれはひねり潰せる程度のレベルなんだろう。(今は大○たれになりそうだけどね……)
だからと言って簡単には引き下がれない。僕にだって意地がある。うんこたれという残念な運命を辿るつもりは、僕には────無い!
「あのね、僕はね。今、漏らしそうなくらいギリギリなんですよ。駄目ぇ? ほんっとギリギリ! 途中下車して来たくらいなんだ」
と、喋りながらも、もう限界が近い僕は、眉をハの字にして情けない顔になっているのは、自分でも想像出来るくらいには焦っていた。
「でもねぇー」
全然「待っててね」なんて言いそうに無い。それどころか考えてもいない喋り方だ。この子なら大丈夫、追い払えるとでも思ってる顔つきに見えてきた。
と、その時! これで第何波目だろう? ぐるぐりゅぅぅぅ~。ねじれるような歪んだ感覚がお腹の中で渦巻いた!
僕は賭けに出た。すー。その調子だ。まだヤバイ感はあるけれど、もりっとした感覚は収まった。
焦ったーーー! 危ないところだった。
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