Chapter.1 桜井澪という女の子

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「皆、寝ちゃってるね。プラネタリウム綺麗なのに」 特別だって伝える・・・か。 「澪」 「ん?何?ハル?今、澪・・・天の川見て・・・っ!?」 皆が寝ているのを良い事に俺は澪の唇を奪った。 「は、ハル・・・」 「手を繋ぐのは友達でも出来る。でも、これは澪にしか出来ない。澪は特別だから・・・」 「ハルには敵わないや・・・」 「澪?」 「こんな事いきなりするなんてずるい」 澪は顔を真っ赤にして言った。 「顔真っ赤だ、澪!」 「は、ハルだってー!」 「あ、赤くねぇし!」 今でも俺は覚えている。 初めてのキスを。 林間学校が終わると、すぐに夏休みが始まった。 「ねぇ、ハル」 「ん?何だよ、今ジムリーダー戦で忙しい」 「ハルー!」 「暑いからひっつくなよ、澪」 「ハルが構ってくれないからー!」 澪は毎日のように家に来た。 「澪は毎日家に来るな。自分ちでやる事無いわけ?」 「家にはいたくない・・・」 「え?」 「ハルに会いたくて来るのはいけない事?」 「い、いけなくない・・・」 「じゃあ、良いじゃない」 本当は毎日会えるのが嬉しいよ。 「澪、さっきからどうしたんだ?本を読んでる俺を見つめて」 「澪ね、ハルを見るのが好きなの」 「な、何だよ。それ・・・」 「ね、ハル」 「何?」 「ハルは澪のどこが好き?」 「なっ・・・」 「澪はね、ハルの好きなとこたくさんあるけど・・・一番好きなのはいつも澪を優しく守ってくれるとこだよ!絵本で見た王子様みたい」 「恥ずかしい奴だよな、お前」 「えへへー!」 「俺も澪の優しいとこ・・・嫌いじゃない」 「他にはー?」 「良いだろ、何だって!」 「教えてよ、ハルー!!」 本当はたくさんある。 でも 恥ずかしくてあの頃の俺には言えなかった。 だけど その日が俺が澪の笑顔を見た最後の日となった。
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