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ーー放課後。
俺は昇降口で待ってみる。
あ・・・
「み・・・桜井!!」
彼女が来ると、俺は彼女に声をかける。
「本城くん・・・?」
「い、一緒に帰ろう」
「良いの・・・?」
「記憶が無くなったら友達じゃなくなるってルールは無いだろ」
「え?」
「記憶が無くなっても桜井は桜井だ」
「あ、ありがとう。私ね、本城くんと話がしたかったんだ!」
「桜井・・・」
「話しかけてくれると嬉しいよ」
澪はにっこりと笑って言った。
変わってない。
澪は澪だ。
「本城くんと私って幼馴染みだったの?」
「ああ。俺だけ生まれた時からずっと一緒。明里達は小学校で出会った」
「そうだったんだ。何で私、忘れちゃったんだろ」
「事故だったって・・・」
「事故なのかな」
「え?」
「私は自分からトラックの前に飛び出したらしいの」
「え・・・」
「何でそんな事をしたのかおばさんに聞いても教えてくれない。おばさん、言ってた。記憶を取り戻しちゃだめって。取り戻したら辛いから・・・」
「辛い?」
「何故辛いかは分からない。でもね、私!本城くん達に会えて嬉しかった」
「え?」
「私は思い出したいよ。逃げるのは嫌なの」
「大丈夫だよ」
「え?」
「きっと思い出せるよ」
「うん」
死のうとしてたのか、澪は。
何があったんだろう。
やっぱり澪が突然いなくなったのには理由があるんだ。
「良かった。元気そうで。ずっと心配していたんだ」
「ねぇ、本城くん」
「ん?」
「私は本城くん達に何かしたの?」
「明里が怒ってたからか?」
俺が聞くと、澪は頷く。
言うしかないようだ。
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