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訪れる沈黙。それはほんの少しの間で、高槻の笑い声によって打ち消された。
「何、え、なんで撫でられてんの」
心底可笑しそうに笑うから照れくさくなって手を離したが、それでも笑顔を見せた高槻に安堵した自分が居て、それがまた不思議で高槻をちらりと見遣ると悔しさからか頭を叩いてしまった。
「いった!ちょ、今度は何。え、気分なの?やめてよ面倒くさい」
「面倒くさいってなんだよ」
話の繋がりが見えなくて思わず俺まで笑ってしまう。
それからだった。俺が高槻とよく話すようになったのは。それは部活が終わってから下校時間までのほんの数分ではあったが、部活が終わるとまだ居る気がして教室へと向かい電気を点けるとやはりそこにはいつも高槻が居た。
寝ている時もあればぼんやりと外を見ている時。時には音楽を聞いている時もあった。しかし何故か電気はいつも消えていて、それがまた不思議だった。
「なあ、なんでいつも電気点けないの?」
「だって明るいじゃん」
「あんな暗いのに?」
「そ。あんな暗いのに」
「いやいや、今お前暗いって認めてんじゃん」
「良いの別に。自分には明るいんだから」
そう言って笑う高槻が、何故か消えてしまいそうな気がして眉を寄せた。何を考えているのか、何を抱えているのかも分からなくて。それでも俺には無理に聞く権利なんてないから、ただこうして隣に座ってくだらない話をすることしか出来なかった。
「ねえ進藤」
「んー?」
「付き合ってよ」
それはあまりにも突然だった。いつものように部活が終わって教室に着くと高槻は黒板に何か書いていた。それは絵なのだろうけれどなんなのか俺には分からなくて、当分終わらなそうだと適当にスマホでゲームをしていた。
「は?」
「だから。彼氏になってよ」
「え…あ、え?」
突然過ぎて理解が出来ずに思わず二度も聞き返してしまった俺に高槻はただ笑ってた。
スマホの画面にはゲームオーバーの文字。黒板には意味不明なキャラクターの絵があって。なんで今このタイミング?とか、なんで俺?とか色々なことが脳内をぐるぐる回ったが高槻の顔を見た瞬間なんでか頷いていた。だって、なんか、泣きそうに見えたから。
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