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「やー、びっくりしたよ。まさか翔に会うなんて」
「俺の方がびっくりだっての。ていうか本当に高槻なわけ」
「だからそうだってば。何回言わせんの」
大学の帰り、先輩の家へと誘われて遊びに行った日。玄関を開けて中に入るとちょっと片付けてくるから待っててと言われてリビングで待たされていたのだがー、
「あれ?かける?」
「え?」
いきなり呼ばれて振り返るとそこには肩より少し長めだった髪はばっさりと短く切られ、明るめの茶色でアシンメトリーなのか髪を横に流し男前になった高槻が居た。や、正しくは高槻らしき人、だ。何故なら服装はメンズ服だし、耳にもリングピアスと小さめのものとで三つピアスを付けていて、男性かとも思えるその出で立ちに俺は高槻だとは思えなかったからだ。そして何よりも感じたのはイケメン過ぎるだろ。ということ。高校の時はどちらかといえばクールな美人、て感じだった。しかし今目の前に居るのは少し軽そうな、それでいてイケメンの中性的なお兄さんだった。
「久し振りだねえ。元気だったー?」
「見ての通り元気だけど、てか、お前何それ。どうしたわけ」
「えー?似合うっしょこれ」
「似合ってけど。寧ろイケメン過ぎて腹立つけど。じゃなくて」
「あはは、イケメンでごめんねー」
「だから!つか、あーもう。なんなんだお前は」
あまりにも変わった高槻に、目の前に居るのは本当に高槻なのかと何度も疑うがそれでもやはり仕草や雰囲気はあの時と変わらないままで、それがやはり高槻なんだな、となんとなく思わせて頭が痛くなるばかりだった。
「で?」
「ん?」
「だから。なんでお前はここにいんの」
「ああ、彼女んちだからここ」
「ああそういうことか。………は?」
「だから、ここ、彼女んち」
高槻のセリフに思わず瞬きをしては何度もえ?という言葉が出た。彼女んち。待て待て。だってお前は女だろ。そう言いたくなったがふと別れ際の時の質問を思い出した。
ー同性に告白されたらどうする?ー
それは、きっと高槻が同性に恋をしていたからなのだろう。そして今、恐らく高槻は迷いもなく自分の想うままに、囚われずに、好きな人と居る。きっと、そういうことなのだろうと、俺は思った。
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