第1章

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携帯の画面に映っていたのは好きなあの子の写真…… 人混みに紛れて目の前の建物を撮るあの子は私が隠し撮りしていたなんて思いもしないだろう。ましてや私が居ることも。 季節は冬。首元を隠す赤いマフラーは彼女の白い肌をより強調していた。 最初は彼女のことが苦手だった。性格は良いとは言えず、同じクラスのある女子のことを「汚い」と言ってあからさまに避けたりしていた。 そんな子を3年になった今、好きになってしまった。何が発端だったのか。私は彼女とろくに話もしたことがないのに。彼女も私のことを嫌っているかもしれないのに。 こんな気持ちは初めてだ。 彼女の側にいられる子がとても妬ましい。 殺してやりたい。私を見て欲しいのに彼女は見向きもしない。もっと美人に生まれたかった。そうすれば彼女も私を見てくれたのに。 何故もっとはやく好きにならなかったんだろう。どうして今更好きになってしまったんだろう。 卒業したら彼女にはもう会えないのに。 そしてとうとうある考えが頭に浮かぶようになった。 ____彼女を殺したい 不思議とそのことに何の抵抗もなかった。「殺人」ということ自体が現実味がないからかもしれない。 それほどまでに私は彼女を誰にも奪われたくなかった。どんなに想っても叶わないのならいっそこの手で葬りたいと。 そして、今…… 夜の路地で私は目の前に横たわる死体を見下ろしている。私は右手の小さいナイフを握りしめ、生きていた上で今ほどの満足感はなかっただろうと思った。ただ一つ残念だったのは日の光が無いことだ。 もしも夜でなければ彼女の首を染める色はまるで赤いマフラーのように見えただろう。
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