第1章

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「月、見えないわね」 「お嬢様こちらにいらしたんですね」 「・・・」 「おじょう・・・」 「お前は誰を呼んでいるの?」 揃い子は不吉などと誰が言い出したのだろう。 そんな根も葉もない因習により私達姉妹は不遇な毎日を送っていた。 公の場に出されるのは長女の雪子ばかりで、妹の月子花子は常に日陰の生活を強いられていた。 妹達の扱いに不快感を覚えた雪子は、ある日『雪』『月』『花』と一文字ずつ書かれた揃いの栞を用意し、こう言った。 「これで今日の『雪子』を決めましょう」 あれから10年。 日記と言う名の行動記録を共有する事で雪子が言い出した悪戯は今日も続いている。 そして今日は私が『雪子』の日。 「お前に私がわかる?」 「月子様ですね」 「なぜ?」 「私をお嫌いな花子様でも、私がお慕いしている雪子様でもないからです」 「正解」 私は『私』の顔で微笑んだ。
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