第1章

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働いていた旅行代理店が潰れてしまった田村里佳は、幼馴染の櫛田浩人の実家の葬儀店の仕事を手伝う。 そこで出会った村田麻子は脳卒中の後遺症で身体がままならず、夫が急死した札幌に行きたくてもいけない状態だった。 海外で暮らす娘の帰国を待って札幌に向かうという麻子。何とかしたいと思う里佳。 麻子の娘、友香はハンガリーで暮らしていた。記録的な大雪で交通網は麻痺、日本にはしばらく帰れそうにもない。 里佳は麻子を札幌まで連れていくことに決めた。 友香も里佳に麻子を託すことに同意した。 里佳と浩人は麻子と三人で札幌に向かう。往路は飛行機。亡くなった和郎の遺体と対面する。 次の朝、和郎は荼毘に附される。慌しいスケジュールで札幌から帰路に着く三人。帰りは列車で長旅だった。 札幌出身の和郎は若い頃、上京する途中で印象的な写真を撮っていた。その撮影箇所に向かう三人。 若い頃、和郎と娘の友香と北海道に来た時は必ず晴れていた。 「私は晴れ女だから」と麻子が言った。 昔からずっと北海道の吹雪を見せたいと言っていた和郎。 けれど、今回の旅でも空は晴れていた。 それが一変した。 吹雪の中をひた走る列車の中で若き日の和郎と同じアングルで写真に納まった麻子。 旅は、新たな思い出を作り上げて終わった。 なんとか葬儀に帰ってきた友香は里佳に礼を言う。麻子はハンガリーに連れていくと言う。 里佳は別れを思い出に変える旅を提供する旅行代理店を自ら始めることを決める。 そのしばらく後、大雪だったヨーロッパが急に晴天になったというニュースを聞いて浩人と里佳は顔を見合わせる。(終)
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