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「ねぇ…もう脱いでもいい…でしょ?」
「まだダメだよ。せっかく似合ってるんだから」
先ほどから僕に気づいてほしそうに視線を送っていた彼女は、手元のしおりを折り曲がりそうなほど握りしめて頬を赤く染めた。
「だって! 着てたらできないんだもんっ」
もう限界なのか、潤んだ目元まで赤くなってる。
僕はクスリと笑うと、そうして20分ほど焦らした彼女に許可を与えた。
「いいよ。今日のところは、デッサンまでにしておこう。脱いでおいで」
シュルリと帯紐を解き始めた彼女に、僕はいじ悪く付け加えた。
「次からは、先に済ませてから頼むよ」
彼女は赤ら顔のままムッとしたように
「今日は冷えるから特別なの!」
と言い返すと、バサリとその場に脱ぎ捨てた着物を踏み越えて一目散にトイレへと走っていった。
「やれやれ、昔の女性は着物を着たままトイレも済ませていたのだろうにね」
僕はため息をついて苦笑しながら、雑に脱ぎ捨てられた白い着物を拾い上げた。
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