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「今日は大晦日だからお蕎麦。お蕎麦嫌いじゃなかったよね?」
「うん」
ソファに座ってて、と言うと葉露ちゃんは素直にうなずいてソファにちょこんと座った。テレビを見てもいいよ、とは言わなかった。退屈さ、を葉露ちゃんに更に投入。
薄口醤油と濃口醤油を適当に入れた汁と、さっと茹でた蕎麦とかき揚げを二人分持って、沈黙を律儀に守るテレビの前の丸テーブルに置いた。食べよう、と言うと、葉露ちゃんはまた素直にうなずいてソファから降りて毛足の長いラグに正座をする。
「足は崩してもいいよ」
「食べたあとに崩す」
「別にそれでもいいけど」
姿勢はきちんとしていて、お箸を持つ仕草もちゃんとしているのに、葉露ちゃんはいただきます、とは言わなかった。
「葉露ちゃんは、いただきますって言わないの?」
「いただきます、は、言わなくてもいいってパパに言われたから」
「そう……」
「お箸と、正座はちゃんと出来ないと笑われるんだって。だから出来ないとご飯がもらえないの」
「……冷めるから食べよう」
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