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ワンピース型のパジャマを着て、ドライヤーで髪を乾かした。生まれつき色素の薄い、薄茶の髪がばたばたと暴れた。鏡からこちらをじっと見てくるのは焦げ茶のひとみだ。
ゆ、る、や、か、に殺される、感覚。
と、いうのを、わたしは確かに知っている。真綿の拘束よりぎちりと苦しく、鎖の拘束よりふうわりとしたものだった。引きちぎるにはあまりに硬くて、放っておくには存在が強すぎた。緩やかさ、というのは時に罪である。
ソファに横たわっている葉露ちゃんに毛布を何枚かかける。しばらくしてこの子が起きたら、ベッドまで連れていくつもりだった。起きなかったらこのまま。抱き上げられるか、と言われたらだいぶ不安だから。
ラグの上にぺたんと座って、わたしはテーブルに頬杖をつく。マグカップの中には夕方飲み終わることが出来なかったコーヒーがある。飲む訳にはいかない、と、思う。きっと頭痛がするほど苦いから。
テレビはやはり付けなかった。付けられなかった。眠たくてしょうがなかった。葉露ちゃんがすぅすぅとちいさな寝息を立ててるのに耳を傾けているとうとうととまぶたか落ちてくる。悪夢を見そうな息苦しさと緊張感があった。悪夢を、見るだろう。
炎天下のあの日を見るだろう。
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