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そんな授業の約一ヶ月後、わたしは「お屋敷」という場所に連れてこられていた。山奥の大きなログハウスをお屋敷、と呼ぶのは違和感があったけど、母がお屋敷と呼ぶので、それに従っていた。
一応父も来ていたのだけど、二日後には仕事だから、と言っていなくなってしまった。少しだけほっとした顔をしたのを、わたしはじっと見詰めていた。一緒に帰ろう、と言わないで、仕事だからママと一緒にいろよ、と振り返りもせずに言った父を、じっと見詰めていた。
おそらく父にとってこの場所は父の常識にはない異端の場所だったのだろう。その中で崇め奉られているカミサマも、それを崇めている母も、異端。その状況を、しょうがないね、で諦めているわたしも異端。
「パパぁー……」
一応、小声で呼んだ。なんだ、とここで聞き返されたら、わたしはお家に帰るもしくは祖父母の家に行きたい旨を伝えるつもりだった。しかし父はちょうどかかってきた電話の対応に忙しそうで、気付くことはなかった。
ゆ、る、や、か、な侵食。
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