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母が「そういう」宗教にハマってしまったのは、実のところわたしのせいであった。色素の薄い薄茶の髪と焦げ茶のひとみ。青白く見えるほどわたしの肌は白い。初対面の人に外国人に間違われるほどに。
親戚の人はお人形さんみたいで可愛いねと言った口で親戚の誰にも似てないと影で言い、父は母の不義を疑った。色素の薄さを抜けば父の顔立ちにそっくりよ、と言ってくれたのは父の祖父母だった、けど、父は彼の両親の言葉を信じられなかった。
母の不義は、実現不可能であった。母はひどく引っ込み思案で、ほとんど外に出ない人だった。引っ込み思案という言葉はまだオブラートに包んだ方と言ってもいいほど。たぶん、心療内科を受診したら対人恐怖症という診断が出た可能性が高い。
わたしが生まれる前は、たぶんそんなにひどくなかったのだと思う。わたしを連れて歩く度に、外国人かしら、ハーフかしら、と声をかけられるせいで酷くなったのだと、思う。
そんな母が浮気なんて出来ようはずがあるだろうか。
いつの間にか父は単身赴任で忙しくなって、母は捨てられたと夜中までずっと泣いていたのをドアの隙間からじっと見詰めていたのをよく覚えている。廊下の黒々とした闇とフローリングの冷たさ。闇と一緒にわたしを切ろうとしているのかとよく思った、ドアの隙間から漏れる光。テーブルに突っ伏してすすり泣く母。
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