第1章 後にも先にも

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あの時を思い返すと…今でも胸が熱くなる。 たった一度きり…そんな体験はもうない。 夕焼けに染まる公園のベンチに座りながら、私と幼馴染みは色々な雑談に花を咲かせ、盛り上がっていたんだけど…不意に聞かれてその質問に答えを出すには少し戸惑いを見せていた。 「キス…ってどんな味するのかな?」 「し、知らないよぉ~っ…した事ないもん」 丁度、お互いがそんな事に興味を持ち始めた年頃だっただけに何とも回答しづらい事で、なんて答えるか迷いに迷っていると… 「してみよーか…奏?」 「へっ?私と圭太でしちゃうの?」 「だって、幼馴染みのお前以外にこんな事言えねーじゃん!」 「女の子とすれば良いじゃん!私は…」 「女の子だろ?奏だって」 「ま、そうだけど…」 「じゃあ問題ないじゃん」 「えーっ!?」 こうなったら仕方ない…すっごく恥ずかしいけど、ここは幼馴染みの圭太の為だし、腹を括って唇を貸そうじゃない… 勿論、私だって初めての体験…しかも圭太となんて有り得ないと思ったけど、覚悟を決めてしまうと意外に開き直ってしまうもので、結局私と圭太はその公園のベンチの所で唇を重ねた。 もう10年も昔の話。
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