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カズ兄はサキの髪を掴み無理やり立たせ、後ろから逃げられないように腕を回される。強い力で掴まれた肩が痛い。
そしてこめかみに冷たい感触。
銃口を向けられてる。
「動くんじゃねーぞ。」
耳の近くで声がする。
恐ろしくて体が震えて悪寒がする。
あの冬のベランダよりも寒い。怖い。
目をギュッとつむって開く。
ふと客の一人に目がいく。
あからさまな安堵。
わたし、この表情知ってる。
子供の頃、私が殴られていていても無関心でいた隣のババアの表情。
自分には関係ない。
自分に被害がなければ誰がどうなろうとかまわない。
母親の理不尽な金の催促。
上司も仕事に支障をきたさないかどうか、関心があるのはそれだけ。
いつもそう。
私はかわいそうな人。
変わらない。
両手をぎゅっと握って胸を3回叩いた。
「早くやれ!!」
怒号が飛ぶ。
カズ兄がサキの頭をぐりぐり掴む。
さらに銃口をこめかみに当て叩く。
3、2、1。
「いくぜ。」
「い、いや。」
タンタンタン。ヒールの音。
「持ってきました!」
銀行員の女が戻ってきたのだ。
助かった!
そう思った時、サキの体に衝撃が走った。
バン!
バン!
バン!
銃声が鳴り響いた。
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