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「完成したよ」
「どれどれ おっ すごいな」
「でしょ モデルがいいから」
「そんなことないですよ でもいいですね」
「ハハハッ 自画自賛しちゃったよ」
「カメラマンさんがお上手だからですよ」
「デザインもいいじゃないの」
「これは私がやったんですよ」
「そんな才能があったなんて知らなかったぞ」
「ただ飲み歩いてるだけじゃないんで」
「ハハハッ」
2週間くらいでチラシは完成した
思ってたよりもかなりいい出来だった
高野くんはあのあと一度も来ていない
連絡先の交換もしてないので会う術もない
「これどうするんですか」
「ほらっ 地域情報誌あるじゃない
そこに挟んでもらうつもり」
「いつからですか」
「来週くらいからだよ 忙しくなるといいなぁ」
「ナツミさん目当ての客で殺到するよ」
「まさか」
珍しく店の経営に乗り気になってるようだ
「じゃあ おつかれさまでした」
「おつかれ~」
「もう帰っちゃうんだ」
「三田さんいい加減にしてくださいよ」
「だって寂しいじゃないの」
別に家に帰ってもひとりなので
このまま話をしててもいいがキリがない
それに会いたい人は高野くんなのだ
もらってきたチラシをテーブルに置いて
買ってきた惣菜をつまみにビールを飲んだ
まだ外は明るい
夕方 夫から電話がかかってきた
「もしもし」
「ヒロシさん! もしかして帰ってこれるの?」
「それが・・・実はプロジェクトの進行が
遅れててあと2ヶ月は帰れそうにないんだ」
「はぁ そうなんだ」
以前よりガッカリしてない自分がいる
高野くんとの浮気が原因なのは間違いない
「ごめんね でもそのあと1ヶ月は休めるから」
「そうなの?」
「会社も悪いと思ってるみたいで
休みだけじゃなくボーナスも出るから
温泉旅行にでも行こうよ」
「うん 楽しみにしてるわ」
「ごめんね ガッカリさせてばかりで」
「ううん でも早く会いたいわ」
「この部屋に飾ってある君の写真を見て
ひとりでしたりしてるんだよ」
「うれしいな」
もし夫が浮気してても何も言えない
「愛してるよ ナツミ」
「私も」
もちろん夫のことは愛してるが
体が高野くんを求めてしまってる
夫がそばにいればこんなことにはならなかったはず
あぁ 夫のせいにするなんて私は悪い女だ
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