第1章

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寒さに耐えきれず、後部座席に置いてあったスミノフウオッカを飲む。 このウオッカは、お土産として持ってきた、沖縄の友人の伝手を頼り入手した泡盛1本では、一家全員酒好きの俺の実家では一瞬で無くなる事を考え、山越えをする前に立ち寄ったスーパーで、10数本買い込んだ物である。 ウオッカを身体に入れると、腹の底から身体が温かくなり、着込んでいた服を逆に脱ぐ羽目になった。 どれくらいの時間、救出を待っていただろうか? ウオッカの最後の1本を飲み終わった俺の目に、雪を降り注いでいた雲の隙間から青空が見えた。 車の中で正月を迎えてしまったらしい。 車から出て周りを見渡す。 俺の車の前後には、俺と同じように車の中で正月を迎えた人達の車だと思うが、車の形の雪山が道路に沿って点々とある。 このまま救出を待っているのも面倒になり、俺はお土産の泡盛を持ち、生まれ故郷の町の方へ歩きだした。 携帯の画面では、道路沿いに埋まっている車から次々と乗っていた人達が救出されているが、みんな頭までカバーをかけられ担架で運び出されている。 俺の車からも人が運び出された。 俺の車から運び出された人は、待機していたヘリコプターに吊り下げられ、病院に向かうようである。 え? 運び出されたのは誰? 俺はここにいるのに何で? ここまで歩いてきた足跡1ツついていない雪原を振り返る。 そこで俺の意識は途絶えた。
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