第1章

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目を覚ました俺はベッドに寝かされており、ベッドの周りには泣きはらした目をした、家族が立っていた。 俺が目を覚ました事に気が付いた兄貴が、廊下に飛び出し大声で医者を呼んでいるのが聞こえる。 父ちゃんと母ちゃんそれに妹達が、顔に安堵の表情を浮かべ口々に声をかけてきた。 兄貴の声で駆けつけた医師の説明によると、俺は低体温症で危ない所だったらしい。 俺と同じように車ごと埋まっていた人達は、全員死亡していた、俺は助け出されたのは元旦だと思っていたが、捜索していた自衛官が俺達の所にたどり着いたのは、4日のお昼近くだった。 凍死と、車が雪に埋まり行き場を失った排気ガスが車内に逆流し、一酸化炭素中毒による死亡である。 俺が助かったのは、ウオッカを飲み身体を温めていた事と、用を足す為に何度も車の外に出たおかげで、車内の換気が行われていた事によるとの事だった。 医者からの説明を聞きながら周りを見渡していると、ベッドの脇にある棚に、お土産の泡盛が置かれているのが目につく。 医者が説明を終わり病室から出て行ったあと、俺はベッドから腕を伸ばし泡盛を掴む。 手にした泡盛を父ちゃんに渡し、声をかける。 「これお土産。 前に友人に貰って飲んだら凄く美味かったんで、父ちゃん達にも飲ませたくて友人に無理を言って手に入れて貰った、与那国島の泡盛、どなん」 父ちゃんは凄く飲みたそうな表情になったが、棚に瓶を置き返事を返してきた。 「これはお前が退院して家に帰ってきたら、退院祝を兼ねて家族全員で飲もう」 その言葉に、その場にいた全員が頷いた。
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