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NO.7 説教と急所
アスタガルドに着く頃には日も暮れ始め、レキの体力も限界が来ていた。普段ならキャンプで一泊し、疲れがとれた朝に戻る。だが、今日は日帰りで砂漠から帰ることになってしまった。
レキは男と近くの広場で座り、休むことにした。広場といっても噴水や洒落た彫刻があるわけではないが芝生がしかれ多くの人が休憩所として利用していた。レキとしては、男と2人というのはいただけないのだが。
しかし、この男はホントに何者なんだ?5時間ほど砂漠の暑さもものとせず歩ける。自分よりも体格で勝る大男を倒せる。恐らく普通の職業じゃない。
広場に着き、思考を巡らせていると男は突然怒ったような口調で説教し出した。
「何故1人で挑もうとしたんです?」
「そりゃ…実力を試したかったらだし…。あのままいってもれば俺でも勝てたかもしれな…」
「勝てるわけないでしょう!命は一つしかないんです!」
「…はい」
男の言うことはもっともだ。今思えば冷静さが足りなかった。
「けど…あんただって、あんなヤツに挑んてたじゃないか…」
男はしばしの間、怪訝な顔をし「ヤツ」が誰かを悟った。
「あれは向こうから突っかかって来たんです。」
「じゃあ、あんたのその自殺志願者のような目はなんだ!生きる気あるのか!」
男は意外にも豆鉄砲を食らったような顔をした。その刹那、酷く悲しそうな顔をして、
「じ、自殺志願者…」
男は心底傷ついた様子でにその場で四つん這いになりうなだれてしまった。
自分の苦し紛れの暴言が急所を射てしまったらしく、レキはどうすればいいのか分からなくなってしまった。
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