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相変わらず アスタガルトは賑やかだ。周りに城壁で囲まれ魔獣の侵入を完全に防いだここは、《都市国家》と呼ばれるようになった。
政治機構、治安維持のための護国騎士団も設立された。
まさにこの世界で唯一の人の楽園だ。同業者連合の勧誘、新しい商店を立て店先で声を張り上げる男、妖しい雰囲気の女がぶらつく男に話しかける。商人、職人、冒険者、あまり表を堂々と歩けないはずの剣客、ならず者もいる。
遠くに目を向けると真っ先にこの都市を囲んだ城壁が見える。高さ十数メートルはあるその上にいるのは護国騎士団の兵士。鈍く光る鎧を身に纏う彼らは外への警戒に余念がない。
古今東西、どこを見てもこれほど活気のある所はない。
冒険家ギルド、GARDENのマスター、フランはギルドの勧誘をしていた。
「よぉ、誰か誘えたか?」
兄のレキだ。ゴーグルと防護ためのマント姿でライフルを携え、フィールドから帰ったことに安心するとともに、余りの暇さに肩を落とした。
「お兄ちゃん…誰も来ないよ…」
「おいおい、腹から声出して勧誘したか?あーあ、やっぱり逆の方が良かったか」
フランは兄の無神経な言葉にムッとさてみせる。確かにアスタガルトの灰色の石畳の上で勧誘する者たちは少しでも目立とうと飛んだり跳ねたり、中には魔術、剣術を披露する者も。こんな騒がしい中で1人で勧誘しても、爆発するような周りの喧騒にかき消されてしまう。
と、各々の仕事をしていた人々が何やら一箇所に集まりだした。異変に気付いたフランは近くの露店の店員に聞いてみた。
「ありゃ多分決闘でしょ。全く…ここんとこならず者が多いせいか、これが流行ってるんだよ。」
どうやら安らぎの広場のど真ん中で決闘が行われているらしい。
「もしかしたら、手練れの冒険者同士の決闘かもしれない。お前も見に行こうぜ」
かなり興奮した様子の兄に呆れつつ、長時間の勧誘による疲れが抜けない体を起こし見に行くことにした。
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