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NO.4 目
決闘が終わった直後の広場、歓声はまだ止まない。あの男が殺生なしで決闘を終わらせたからだ。
マスクの男はそそくさと急いでその場を離れようとする。男が群衆の方に近づくと、海が割れるかのように道が開いた。
男がフィールドへ移動するゲートに入る直前、一人誰かが近づいた。フランはそれが兄だと分かったと瞬間、顔が青ざめるのを感じた。
「な、なぁ…あんた、うちのギルドに来てくれないか?」
レキが恐る恐る尋ねると、男は振り返った。フランとレキはその顔を見たとき少し驚いた。
その目は獣の様な目でも、狂った目でもなかった。ただただ、哀しい目をしていた。だが、どこか見ていて安心できる優しい目だった。
「誘ってくれてありがとう…でもギルドに入る気はないんだ。すまない。」
そう言い残し、男はゲートの奥に消えた。
「ちょっと!どうゆうつもり!」
「どうって…あの人みたいに強い人がいてくれれば、万事解決じゃないか!」
フランは兄のあまりの無鉄砲さに呆れていた。ついさっき、決闘をした人を勧誘するなど考えられなかった。
「ちょっと優しい人だったから良かったけど…もしかしたら、その場で殺されてたかもしれないんだよ?」
でも、大丈夫だったろ?と相変わらずの能天気な口調で話す。村でいたころからずっとそうだ。無鉄砲で無邪気で、肝心なところで頼りなかったり…けどたまに兄らしいところもある。
先程の決闘を見て感化されたのか、レキはまたフィールドに行くと言い出し、ゲートへ向かう兄を見送った。
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